近隣対策後に、施工業者・建築主が変わった場合、再度の対策は必要となるのか?
C社がD社と請負契約を結び、マンションを建築した所、近隣住民のEらがマンション建設工事に伴う騒音・振動による精神的苦痛をうけ、また日照阻害によって居住環境が悪化したとして、C社とD社に対して民法709条に基づく損害賠償(慰謝料)を請求する訴訟がありました。
背景
近隣関係者には相互考慮、相互抑制の調整義務があるにも関わらず、建築主であるC社と施工業者であるD社は、事前にEらに一切通告することなく本件マンションの建築工事に着手したもので、上記の調整義務に違反すると主張。
C社らは、本件マンションの建設は、当初建築主がA社、施工業者がB社として計画されており、A社とB社はマンション建築に関し、当該自治会との間で建築物件、工事の管理などを定めた協定書を作成していた。C社はその後A社から、近隣住民の合意を含む本件マンションの建設に関する一切の権利を譲り受けたものであり、その際、Eらから特段苦情の申入れなどトラブルはなかったため、C社としては近隣住民の了解が得られたものとして本件工事を続行させていた。
裁判所の判断
本件マンションの建設にあたっては、当初の建築主であるA社と施工業者であるB社はEら近隣住民に対して建設工事の説明を行い、1年にわたって協議を重ねた。その結果、Eを含む3世帯が1部反対したものの、他の近隣住民との間では合意に達し、協定書が作成された。そして上記協定書締結後に、C社は本件マンションの建設に関する一切の権利を譲り受けて建設工事に着工したのであるから、C社らが近隣住民に対して事前に一切通告することなく建築工事に着手したとのEらの主張は採用できないとの判断が下された。
簡易解説
協定書締結後の事業主・施工業者の変更に対し、再度説明義務が生じるかどうかの訴訟で
裁判所は協定書の締結を含めた一切の権利を譲り受けていると判断し、再度の説明義務は生じない、よって近隣住民の調整義務を怠ったとの主張は認められないとの判決がでた事例です。