マンション新築工事などで日照侵害補償と工事迷惑料の支払いは「商慣習化」しているか|不動産コンサルティングのM.I.A.都市開発株式会社

COLUMN
コラム

マンション新築工事などで日照侵害補償と工事迷惑料の支払いは「商慣習化」しているか

B社が、準工業地域(建蔽率60%、容積率200%、準防火地域、第2種高度地区)の土地上
にマンションの建築を計画し、着工・完成させたことに対し、Aら近隣住民が損害金支払
約定および不法行為に基づく損害賠償金の支払いをB社に求める訴訟がありました。

背景

Aらは、建築基準法が建築協定について規定している点、各地方自治体が建築協定条例を
制定している点、建築業者は、近隣住民の同意・協力を得るために工事協定書を締結する
よう地方自治体から行政指導されている点から工事協定書締結の前提として日照侵害補償
と工事迷惑料の支払いは商慣習化しており、また本件ではAらに対してB社が金員の支払い
を提案しており、損害金支払約定が成立している、またプライバシーの侵害や工事の騒音
振動に悩まされた事、協定書が締結されないまま工事が強行されたことにより、不法行為
が成立していると主張。
それに対しB社はマンション建築の計画し、近隣住民に対して計6回説明会を開催したがそ
の際にAらは建設反対を表明、日照侵害補償および工事迷惑料の支払いを要望。
B社はAらに上記補償および迷惑料を支払う事を提案し、工事協定書の締結を求めたがAら
は金額が安すぎることを理由に工事協定書の締結を拒否したため、B社は工事協定書の締
結を断念し、Aら以外の近隣住民に工事協力金を支払い、工事を着工、建物を完成させた経
緯から、B社が提案した日照補償などは、監督官庁の行政指導およびB社の営業政策により
、円滑に建築計画を実施するための協力金であり、支払いは商慣習化していない。またA
らが過大な金銭を要求して工事に同意せず、工事協定も拒否した以上、損害金支払約定は
結局成立しなかったとし、不法行為の主張についても全面的に争った。

裁判所の判断

交渉の経過からみて、B社は行政指導及び営業政策により建築計画を円滑に実施するため
の協力金として、Aらの要望に基づき日照侵害補償、迷惑料名目で任意の金銭支払いを提
案したにすぎず、Aらが工事協定の締結を拒否した以上、この支払い提案は合意に至って
いない。また、Aらの主張のような、建築基準法、建築協定条例、行政指導によっては、
日照侵害補償や工事迷惑料を支払う商慣習の存在は認められない。
Aらが主張する不法行為についても、その侵害は社会生活上の受忍すべき限度内のもので
あり、人格権も侵害していないとの判断を下した。

簡易解説

迷惑料などの支払いが商慣習化しているかどうかが争点となった今回の訴訟で裁判所は建
築基準法、建築協定条例、行政指導はいずれも商慣習存在の根拠とはならず、他にこの商
慣習を認めるべき根拠はないと判断しました。ちなみに商慣習とは商取引における一種の
社会規範で、法律としては認められないがある程度まで拘束力をもつものです。またその
他日照侵害やプライバシーの侵害なども争われましたが、いずれも社会生活上の受忍限度
内との判断がなされた判例です。

M.I.A都市開発

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