隣接地の老人ホーム建築工事中に発生した騒音、振動の被害を理由とする損害賠償請求が棄却された事例|不動産コンサルティングのM.I.A.都市開発株式会社

COLUMN
コラム

隣接地の老人ホーム建築工事中に発生した騒音、振動の被害を理由とする損害賠償請求が棄却された事例

Aらが居住するマンションに隣接する敷地に有料老人ホームを建築した建築主B社と本件老人ホームの設計及び建築を請け負ったC社に対し、騒音・振動等の被害を被ったとして不法行為に基づく損害賠償を求める訴訟がありました。

背景

Aらは本件老人ホームを建築中の収音マイクの位置が、騒音振動規制法に定められた場所ではなく、意図的に数値を低くするため設置場所を操作した。また収音マイク設置場所と各くい打ち地点に最も近い境界線上の距離との距離差を基に騒音減衰状況を計算すると規制基準の80デシベルを大きく超えていると主張。
B及びC社は収音マイクの設置場所は適法であり、数値を意図的に低くする意図はない。また規制基準を超える音が出ることはあったとしても、突発的なものであり法規制を破るようなものではないと争った。

裁判所の判断

環境省の通達(騒音振動規制法の施行について)は、測定場所について「測定しやすく、かつ、測定地点を代表すると認められる場所とすること。この場合、法が生活環境の保全を目的としていることから、原則として住居に面する部分において行うものとすること」と規定しているが、これは測定しやすさや代表的地点と認められる場所を測定場所とするに際し、生活環境の保全の目的から、原則として住居に面する部分において行うとするもので、必ずしも測定場所を隣接する敷地との境界線上にしなければならないとするものとはいえない。
また本件収音マイクの設置場所はマンション敷地の境界の北端から東に2.5m離れているに過ぎず、北側道路を挟んだ向かい側は駐車場であるがその向こうには他の住居があることが認められ、測定値を表示して近隣者に示すためには道路面が適切であること及び本件マンション以外にも老人ホーム敷地の周辺には住居があることなどからすれば、本件集音マイクの設置場所が上記通達に反して不適切なもので、被告らが意図的に騒音値を低くするために設置場所を操作したとまでいうことはできない。
なお、Aらの各居室は、いずれも本件マンションの東側かつ北側道路側にあり、本件収音マイク及び振動測定器の設置場所に近接した位置にあるから、測定値は実際にAらが受ける騒音に比較的近いという事ができる。
騒音減衰状況の計算についても、前提として測定時の騒音源が特定されておらず、杭打ち地点すべてが測定時の騒音源であると言えない上、その計算方法も十分に検証されたものであるとは言えない。
本件老人ホームが建築されている間、本件収音マイクの設置場所における音量が80デシベルを超える1時間の時間帯は、5回であり、その測定された数値は最大でも82.9デシベルであり、規制基準の80デシベルを、基準値全体の4%弱を上回るに過ぎないことからすれば、本件工事の騒音が受忍限度を超えるものであると認めることはできないと、請求を棄却しました。

簡易解説

収音マイク及び振動測定器の設置場所などについて争われた裁判です。
測定場所は原則としては住居に面する部分において行うものとする事と規定されていますが、必ずという訳ではなく代表地点と認められるところであれば、隣接する敷地との境界線上でなくてもよいという事ですね。また騒音の規制値を超えたからといって直ちに受忍限度を超えるという事ではなく、頻度や時間によっても判断されるという事です。本件では他に日照・眺望の阻害、プライバシーの侵害なども争われましたがいずれも受忍限度を超えるとは言えないと棄却されています。

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