日影規制の対象外である建物によって日照の阻害を受けた場合損害賠償は発生するのか|不動産コンサルティングのM.I.A.都市開発株式会社

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コラム

日影規制の対象外である建物によって日照の阻害を受けた場合損害賠償は発生するのか

A氏が所有し居住する建物の南側隣接地にB社が建物を建築したことにより日照が阻害される被害を受けたとして、B社に対して、不法行為に基づく損害賠償を求める訴訟がありました。

背景

第一種低層住居専用地域にあるA氏が所有する土地建物の南側に建築されたB社建物によりA氏所有建物の南側主要開口部は、冬至日の午前8時から午後4時までの間、平均地盤から1.5メートルの高さで約7時間もの間日照を阻害され、A氏建物にかかる5メートルライン(隣地境界より5メートル、離れた点を線で結んだもの)を超えた部分については4時間以上の日照阻害は存在しないが,午前9時から午前10時及び午後1時から午後4時にわたって,A氏建物にかかる5メートルラインを超える部分がB社建物によって阻害され続けている。とりわけ,午後2時ないし午後4時までにかけて,建物の大部分にB社が建築した建物の日影が及ぶ時間帯があり,多大な日照損害をもたらしている。
また、従前にB社が所有していた建物(以下「旧建物」という。)は、A氏の建物から離れた位置にあり,日照権はほとんど侵害されていなかった。B社は、旧建物とほぼ同位置に建築することによって,A氏の日照侵害を回避することができた。B社は、仮に建築基準法が適用されるとすれば違法となるか否かの限界のところに建てている。あと少しでも南側に建てていれば、仮に適用対象の建物となった場合でも法的な抵触部分がない状態にできたはずである。あと数センチメートルのことであるから,被告らが加害行為を回避することは容易であったと主張。
対するB社は、当該建物は建築基準法の日影規制に違反するものではなく、またA氏の申し入れを受けて、その他の新築建物との配置を考慮しつつ、土地との隣地境界線から最大限南側に離して建築した。また建物の形態・構造は一般的なものでありA氏建物の日照阻害を企図したものではないと主張。

裁判所の判決

冬至時の真太陽時で午前8時から午後4時までの間のほとんどの時間、平均地盤面から1.5メートルの高さにおいて、B社建物による日影がA氏建物の南側の主要開口部にかかる。 この日照阻害の状況は、旧建物が建っていたときよりも大きいものである。もっとも、A氏土地の隣地境界線から5メートルを超え10メートルまでの部分についてみれば、B社建物による日影がかかるのは、午前9時、午前10時、午後1時にわずかにかかるほかは、午後2時以降の2時間程度であって、上記部分の日影時間が4時間を超えるのは、原告土地のうち原告建物の建築されていない部分について4時間15分程度認められるのみである。以上によると、B社建物によってA氏建物の日照が阻害されていることや、その程度は旧建物が建っていたときよりも大きくなったと認められるものの、B社建物は建築基準法等による日影規制の対象外の建物であって、B社の建築について法令に違反する点があるとはいえないこと、B社建物による日影について、仮に日影規制を受けるとした場合には、規制を超える部分があるもののその違反の程度はわずかであること、B社建物は北側の境界から3メートル以上の距離をとって建築されていること、他方、A氏建物の建ぺい率が規 制の50パーセントを超えるものであることや南側の境界との距離が小さいこともA氏建 物の日照阻害の程度が大きくなっていることの原因であることを考慮すると、B社建物建築によるA氏建物の日照阻害が、社会生活上一般に受忍すべき限度を超えるものであるとは認められないとA氏の請求を棄却した。

簡易解説

建築基準法等の法令を守って建てられた建築物による日照の阻害の損害賠償を争った事例ですが、この事例では原告側の建物に違法性がある事、また建てられた建築物が仮に日影規制を受けたとしても違反の度合いが少ないことから請求が棄却されました。
今回は原告側に問題がありましたが仮になかったとしても、隣地への配慮をきっちりしており、阻害の程度についても少ないものであったため判決は変わらなかった可能性が高いと言えます。逆をいえば建築物に違法性はなくとも隣地への配慮にかけた建築物である場合は、損害賠償請求を認められる事もあるという事ですね。

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