総合設計制度に基づく規制緩和の取消しを近隣住民が求められるか
Aらが居住するマンションの隣接地でB社が計画したマンション建築をめぐり、建築基準法59条の2に基づく総合設計制度による容積率、斜線規制の緩和により日照などに被害を受けるとして、同許可の取消しを求めて行政事件訴訟法8条に基づく抗告訴訟を提起しました。
背景
用途地域が商業地域に指定されている土地に建てられた13階建てのマンションに住むAらの南西隣接地(用途地域は商業地域)にB社がマンション建築を計画。B社は建築基準法59条の2に基づく総合設計制度による容積率制限、斜線制限の規制緩和の許可申請を行い、C市長は本件建物の高さを44.50m、容積率を707.31%とすることを許可。Aらはこの許可に基づく建築により日照などに影響を受けるとし、同許可の取消しを求めて抗告訴訟を提起した。
裁判所の判断
C市長が行った規制緩和の本件許可処分について、建築基準法59条の2は、一般的に、特定行政庁が計画建築物に対する容積率、斜線制限等を緩和するについては、①その敷地に政令で定める空地を有し、かつ、その敷地面積が政令で定める規模以上の建物である事、②交通上、安全上、防火上および衛生上支障がなく、かつ、建蔽率・容積率および各部分の高さについて総合的な配慮がなされていることにより、市街地の寛容整備改善に資すると認められる事という要件を課している。本件マンション計画は①の要件を充たすものであり、②の要件については「総合的な配慮」など抽象的な文言を含むものであり、その有無の判断は比較的広範な裁量に任されている行為であると解されるところ、C市長は、その具体的な基準として、国土交通省の通達に準拠した実施基準を定めており、その合理性が認められるとした上で、C市長はこれに適合するか否かにより具体的な許否の処分を行っており、本件許可処分もこの実施基準によって行われているのであるから、結局C市長の裁量の範囲内のもので適法であるとし、Aらの主張をすべて排斥した。
簡易解説
総合設計制度の許可をめぐり、近隣住民と行政で争われた裁判です。建築基準法59条の2に基づく総合設計制度は、一定規模以上の公開空地を有する建築物の計画に対し、特定行政庁の許可という行政処分によって、法が一般的に規制している容積率(同52条)や斜線制限(同56条)などを緩和するという特典を与えてこれを奨励し、これによって都市の中に少しでもオープンスペースを確保し、市街地環境の整備改善を図ろうとしている制度です。
Aらに程度は異なるものの日照阻害の被害が生ずることは認められたが、Aらの住居および建築計画地が商業地域である点や、C市長の実施基準が明確かつ国土交通省の通達に準拠していることなどからAらの訴えを退けました。